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チェレスタとは?
(「パリのアメリカ人」とチェレスタ)

<チェレスタの一例>
第34回定期演奏会ギャラリー(写真集)より
(写真のチェレスタによる演奏例:MP3形式)
チェレスタ(celesta)とは、1886年に、フランスのオルガン製作者オーギュスト・ミュステルによって考案・製作された、ピアノのように鍵盤でならす鉄琴(打楽器)の一種です。
(確かに、上の写真のように一見小さなアップライト型ピアノ(又はよく小学校の教室で見られるリードオルガン)のような外見から、オルガン製作者によって作られた経緯がよく分かります。)
その音は”ばち”で叩いてならす普通の鉄琴に比べますと、軽くて柔らかい、上品な響きがするため、この楽器がフランスで発明された19世紀末以降、いろいろな管弦楽曲で静かに煌めくような彩りを添えるための楽器として多用されております。
楽器名の由来であるイタリア語「celesté(天界の)」の通り、まさに「天界の音色」なのです。
<チェレスタの特徴>
チェレスタの音の鳴る原理はピアノと同じで、鍵盤を押さえると楽器内のハンマーが動いて鉄琴を叩き、音が鳴るというものです。つまり、(かなり)簡単に言いますと、音を鳴らすものがピアノ線か鉄琴かの違いなのです。
しかし、その鍵盤を叩く感覚はピアノのそれとかなり異なっており、(内部構造上の問題と思われますが)音がピアノに比べて若干鈍く出るような感じがするのと、出せる音の強弱の範囲(専門用語でダイナミクスと言います)がかなり狭くなっているので、思いっきり鍵盤を叩いてもピアノほどに叩く力に対する音量差が出ません。
ちなみにいつも当団でチェレスタを弾いてもらっている方に、ピアノと比べて感じたことを聞きますと、(1)初めてチェレスタを見たときに、「えっ・・・
真ん中の”ド”ってどこ?」と思ってしまった(笑)。(2)鍵盤を(ピアノに比べて)かなり強めに叩かないと思った音量の音が出ない。(3)音の出方が鈍く思える。というコメントを頂きました。
まあ、ピアノと比べて「神秘的で上品だけどドラマ性に欠ける」と、言ったところでしょうか・・・
<チェレスタとオーケストラ>
チェレスタが管弦楽史上初めて登場したのは、1892年に上演されたチャイコフスキー作曲の超メジャーなバレエ「くるみ割り人形」でした。
当時「くるみ割り人形」を作曲していたチャイコフスキーは、その中にある「金平糖の精の踊り」と言う踊りの曲でメロディーを奏でる楽器に苦慮しましていました。この曲で踊る「金平糖の精」は、広いホールの中、冷たい輝きの中で、ゆっくりと静かに踊るのですが、その感じにマッチした楽器がなかなか見つからなかったのです。
そして、そんな中でチャイコフスキーはフランスでチェレスタの音に触れ、一発でこの楽器に決めてしまったそうです。
ちなみに、この「くるみ割り人形」で管弦楽曲にデビューした楽器には、チェレスタのほかバス・クラリネット(低音域を鳴らすクラリネットの一種で、「パリのアメリカ人」にも登場します)があります。
その後、20世紀に入って、チェレスタは交響曲にも登場し、マーラーやショスタコーヴィッチなど多くの作曲家が積極的に使ってきました。
現代曲においても(もちろんティンパニや大太鼓ほどではありませんが)汎用される打楽器の一つとなっています。
<「パリのアメリカ人」とチェレスタ>
「パリのアメリカ人」では、中間部のトランペットが哀愁たっぷりに吹くブルースに到達する前、テンポがゆっくりになってヴァイオリンがおどけたようなソロを弾く直前になって、突如ハープのような分散和音をかき鳴らします。
また、ヴァイオリンのソロが一時中断したあとに、木管楽器とともに和音を出して煌めきのような表現を醸し出します。
さしずめ、今までうきうきした心境でパリを訪れたアメリカ人が、夜になってホームシックにかかり、故郷のアメリカを想う心境をブルースで表現する場面でしょうか・・・
つまり、「パリのアメリカ人」におけるチェレスタの役割は、もっぱら「夜の星の煌めき」のような表現をするためのものであって、チャイコフスキーの「くるみ割り人形」ほど表に出すことはなく、専ら他の楽器や声の(ちょうど「隠し味」のような)補助的な役割にしか用いられていないのです。
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