|
(このページを直接ご覧いただいた方へ)
このオペラ「アイーダ」の作曲の経緯は、こちらの解説ページにあります。
また、オペラ「アイーダ」のストーリーについては、こちらの解説ページにあります。
さらに、作曲者のジュゼッペ・ヴェルディについては、こちらの作曲者紹介ページで紹介しています。
<第2幕グランドフィナーレの概要>
−祝勝の大合唱と豪華絢爛たる凱旋や舞踏の一大スペクタクル−

<古都テーベにあるカルナック・アメン大神殿の遺跡>
数多くの遺跡が存在するエジプト中部の古都テーベにあって、
このカルナック・アメン大神殿は最大の規模を擁する大遺跡です。
このオペラ「アイーダ」の作曲当時から存在は知られていましたが、
原案者のオーギュスト・マリエットは豪華絢爛な凱旋の場として、
この大神殿をバックにするのがふさわしいと考えたのでしょう。
|
 |
今回演奏する第2幕グランドフィナーレは、エチオピアの侵略軍を下したエジプト軍の輝かしい凱旋を祝う場面を描いており、豪華絢爛な舞台と下記の壮大な歌詞による大合唱、行進あり舞踏ありのヴァリエーション豊かな音楽という、聴衆の視覚と聴覚を最大限に楽しませる一大スペクタクルとなっています。
総譜(台本)のト書きによりますと、この場面の舞台設定は以下の通り、非常に豪華絢爛なものとなっています。
「城塞都市テーベのとある城門。
舞台前にはシュロ(ヤシ)の木の植え込みがある。
右手にはアモン神殿(上写真のカルナック・アメン大神殿のことか)があり、左手には深紅の天蓋をかざしたファラオの玉座、舞台奥には凱旋門がある。
舞台上には民衆がひしめき合っている。」
|
<左の絵>「隠れたるもの」と称されるテーベの神「アメン」
このアメン神は、エジプト南部のテーベで古来から崇拝されていた神の一人で、古代エジプト王国の首都がテーベに移った当時に注目されました。
最終的には古来からの太陽神ラー(=エジプト北部の太陽神信仰)と習合され、アメン・ラー神として、国家の守護神となりました。 |
第2幕グランドフィナーレの音楽は、以下の4つの部分から構成されています。
1.
ファンファーレと兵士や神々への讃歌
バンダ(オーケストラ外の金管楽器演奏集団、詳しくはこちらの紹介ページで)による勇壮なファンファーレで兵士らの凱旋が知らされた後、喜び勇んだ民衆たちが「エジプトと大地の守護神イシスに栄光あれ!」と、勝利を祝う歌を皆で合唱します。
続いては若い娘たちによる静かながらも艶やかな合唱で、凱旋する兵士たちを月桂樹と花々で飾ろうと歌います。
そして、雰囲気はとたんに変わって、男性の司祭たちが力強い歌声で「この喜ばしい日に神々への感謝を捧げよう!」と、次々に輪唱します。
それに民衆たちの声が加わって、凱旋の雰囲気はいやがおうにも高もってきます。
2.凱旋行進曲(
オーケストラのみ)
|
 |
続いて、オーケストラ外のエジプト・トランペットとバンダの演奏で凱旋行進曲が始まります。この旋律は、現代のサッカーの応援歌の原曲としても有名ですね。
このとき、オペラの舞台上では、凱旋兵士に戦車、神々の像や戦利品の数々など、いろいろな人や物が凱旋門から入ってきます。
この行進曲で主旋律を演奏する「エジプト・トランペット」とは、古代エジプト時代のトランペットに模して作られた長い直管型のトランペット(管を曲げないまっすぐなトランペット)のことで、このオペラのために作成されたことから「アイーダ・トランペット」とも呼ばれています。
(エジプト・トランペットは、左の絵のトランペットに比べて約3倍の長さがあります
が、古代エジプト時代のトランペットは左の絵のような長さと形状です。)
|
<左の絵>
オペラの原案者オーギュスト・マリエットのデザインによる
古代エジプト時代のトランペット(シェネブ)奏者の衣装デザイン画
古代エジプト時代のトランペットは、左の絵のように、直管型の管の短いもので、
特に神聖な楽器とされていました。当時の呼び名は「シェネブ」と言い、軍の凱旋を描いたルクソール神殿の壁画などに楽器とその奏者が描かれています。
1922年には、かの有名なツタンカーメン王の墓の玄室から、紀元前14世紀頃に使われた金と青銅の合金製と銀製のトランペットが2本発見されています。 |
3.舞踏音楽(オーケストラのみ)
凱旋行進曲が終わると、突如おもむきが変わって、華やかな舞踏音楽が始まり、オペラの舞台上では、音楽に乗ってバレリーナたちによる華麗な祝勝の踊りの数々が披露されます。
音楽の内容としては、タランテラ風の早い3拍子の舞曲(タランテラの詳細はこちらのページで)を中心に、中間部が4拍子のアラビア風のエキゾチックな旋律となっています。
(ただ本当は古代エジプト時代の音楽スタイルを目指していたそうですが、作曲当時の古代エジプトに関する資料不足で、それは実現できなかったようです。)
<なぜオペラの本筋に関係のない舞踏音楽があるのか?>
舞踏音楽は、フランス式グランドオペラの「お約束」と言うべき出し物の一つで、オペラ「アイーダ」に限らず、「グランドオペラ」と称するオペラには、必ずこのようなバレエの場が登場していました。
その理由は、グランドオペラが数多く作曲されていた当時の経済的事情と、貴族たちの「わがまま」にありました。
現在もそうですが、オペラ上演には膨大な資金が必要で、当時その出資者となっていた裕福な貴族たちの愛人には、高級娼婦に勝るとも劣らぬ美貌とスタイルを持つバレリーナが多くいました。
貴族たちは、ご自慢の愛人たちを自ら出資するオペラに何とか登場させたいと考え、興行主や作曲者に無理言って、本筋には関係しないバレエの場をオペラ中に挿入させたのです。
4.
大合唱とラダメスの凱旋
舞踏音楽が終わると、再び最初の合唱と同じ旋律になりますが、歌詞は違ったものになっています。ここでは、民衆と司祭たちが同時に歌い、最後の方は全員がいっせいに歌う大合唱となります。
後半部の歌詞は何度も繰り返され、最後に向かうにつれてテンポを速めて、聴衆のテンションが上がるように工夫されています。
一番最後にはエジプト・トランペットとバンダが再度登場し、オーケストラの音と相まって、最大音量のクライマックスを築き上げたところで、この大スペクタクルを華麗に締めくくります。
<合唱の歌詞>
−祝勝とラダメス軍や神々への讃歌−
上記の通り、この合唱はエジプト軍の凱旋を祝う歌詞と、神々への感謝を表す歌詞に分かれています。
合唱団も大きく民衆(男女)、娘たち(女性)、司祭たち(男性)に分かれており、前半部はそれぞれが順番に独立して歌い、凱旋行進曲と舞踏音楽が終わった後の後半部では、皆が折り重なって斉唱します。
(歌詞に関する注意)
基本的に歌の進行に合わせて歌詞を掲載しているため、一般的な歌詞対訳と違って、後半部分に同じ歌詞の重複記載が多くあります。
悪しからずご了承ください。
また、歌詞の後半部分で、文字の背景が黄色にマーキングしてある部分は、(順番ではなく)同時に歌われる部分です。
|
原語の歌詞 |
日本語対訳 |
<Popolo>
Gloria all'Egitto, ad Iside
Che il sacro suol protegge;
Al Re che il Delta regge
Inni festosi alziam!
<Donne>
S'intrecci il loto al lauro
Sul crin dei vincitori;
Nembo gentil di fiori
Stenda sull'armi un vel.
Danziam, fanciulle egizie,
Le mistiche carole,
Come d'intorno al sole
Danzano gii astri in ciel!
<Sacerdoti>
Della vittoria agl'arbitri supremi
Il guardo ergete;
Grazie agli Dei rendete
Nel fortunato dì.
<Marcia Trionfale>
(Le truppe Egizie, precedute dalle fanfare, sfilano dinanzi
al Re. )
(Altro corpo di truppe con alla testa i trombettieri)
<Ballabile>
(Un drappello di danzatrici che recano i tesori dei
vinti.)
<Popolo>
Vieni, o guerriero vindice,
Vieni a gioir con noi;
Sul passo degli eroi
I lauri, i fior versiam!…
<Sacerdoti>
Agli arbitri supremi
Il guardo ergete,…
Grazie agli Dei rendete
Nel fortunato dì.…
(Entra Radamès, sotto un baldacchino portato da dodici
uffiziali.)
<Popolo>
Gloria! …
gloria all'Egitto,…
Gloria!
<Sacerdoti>
Grazie agli Dei rendete
Nel fortunato dì.…
Grazie agli Dei! |
<民衆>
エジプトとその神聖なる大地の守護神
イシスに栄光あれ。
ナイルのデルタを治める偉大なファラオに
祝典の讃歌を捧げよう!
<娘たち>
月桂樹や蓮の花で編まれた月桂冠を
勝利者たちの頭上へ。
優美に満ちた多くの花々を
勇士たちの武具に覆いかけましょう。
踊りましょう、エジプトの娘たちよ、
神秘的な輪舞を、
太陽の周りを
天空の多くの星々が踊るかのように!
<司祭たち>
いと高き審判者がもたらした勝利に
まなざしを向けよ。
神々への感謝を捧げるのだ
この喜ばしい日に。
<凱旋行進曲>
(ファンファーレに導かれて、エジプト軍の兵士が隊列を組んでファラオの前を行進する。)
(トランペット奏者を先頭として、エジプト軍の別の隊列が登場する。)
<舞踏音楽>
(戦利品の数々を手に持った女性の踊り子たちの一隊が登場する。)
<民衆>
さあ来るのだ、復讐の勇者たちよ、
来るのだ、われらの喜びと共に
英雄たちの歩みの上に
月桂樹や花々を敷きつめるのだ!・・・
<司祭たち>
いと高き審判者たちに
まなざしを向けよ・・・
神々への感謝を捧げるのだ
この喜ばしい日に。・・・
(12人の軍士官で支えられた天蓋(てんがい)の下にラダメスが登場する。)
<民衆>
栄光あれ!・・・
われらのエジプトに栄光あれ・・・
栄光あれ!
<司祭たち>
神々への感謝を捧げるのだ
この喜ばしい日に。・・・
神々へ感謝を捧げよ! |
(歌詞の注釈)
ナイルのデルタ:
ナイル川の流域にあるエジプト全体を指しています。
直接的には、地中海に面したナイル川河口の巨大な三角州地帯を指しており、現在のエジプトの首都カイロを始め、地中海岸の大都市でプトレマイオス朝時代の首都アレクサンドリアや、古代エジプト古王朝時代の首都メンフィスはちょうどこの地帯に位置しています。
この三角州地帯は、ナイル川がもたらす恵みを最大限に享受していた地域で、川からもたらされる肥えた土壌に多くの農作物が実り、また魚介類も豊富に捕れました。
このようなナイル川のデルタ(三角州地帯)は、エジプトそのものの代名詞となっていたのです。
|